まとめ
- バッテリー劣化メカニズムの理解が進み、劣化の程度は初代の1/2まで抑えられている。
- バッテリーモジュールの放熱性が初代初期型(2010)より向上している。初代後期型(2015) 30 kWhモデルとは外見上大きな違いがない。
新型リーフはバッテリー容量が40 kWhとなり、JC08モードで400 kmの航続距離があるとされています。
初代リーフ、それも初期型に乗っている身としては、バッテリーの容量の同じく、バッテリーの劣化がどの程度抑えられているかが気になります。新型リーフの発表会の映像を見る限り、バッテリーモジュールの外観や配線、お弁当箱のようなモジュールが並んでいる様子にあまり大きな変化がないように見えます。
バッテリーの進化については、日産の坂本副社長のコメントがResponseに取り上げられています。
バッテリーが放電する時に電極内部で起きている現象をかなり理解できるようになった。また、バッテリーの耐久劣化についても、そのメカニズムが分かったという。これによって、バッテリーが保持できるエネルギー密度を飛躍的に上げることができ、寿命も大幅に伸ばすことができた
【日産 リーフ 新型】坂本副社長「低重心でスポーツカーに負けない性能を持っている」
日経ではセル厚みが30 kWhモデルに比べて0.9 mm厚くなっている(もともと約1 cm厚らしい)と述べられており、また充放電時に起きている現象をSpring-8などを使って把握することで電池劣化メカニズムに関する知見が得られ、新型バッテリーに反映されているとされています。日産グループの解析部門である日産アークの対外発表を見ると、それらしい内容の研究が行われています。
初代リーフのユーザーとして衝撃的なことに、新型のバッテリー劣化は10年10万km走行しても新車時の10%に留まると述べられています。理想的な試験環境でのデータだとは思いますが、少なくともメーカーが公表しているデータでさえ初代リーフのバッテリーが5年10万kmで20%劣化することを考えると、画期的な進歩といえるでしょう。
——電池に劣化の心配はないのか。
心配は少ない。例えば1年あたり1万km走行、それを10年間続けても新車比で10%以内の劣化に抑えられている。(つまり10年後でも1充電あたり360kmほど走行可能。)
日産副社長が語る「リーフ」開発、2018年に高性能モデルも
おそらくは電極構造や分子レベルでの改善はあるのでしょうが、比較的簡単に情報が手に入る外見にもバッテリーの進化が見て取れます。そこで今回はバッテリーモジュールに構造について調べてみました。
新型バッテリーモジュールの画像を良く見ると、初代リーフのように缶に空気穴があるのではなく、端が開放されていることがわかります。高温環境でバッテリー劣化が加速されることを考えれば、放熱性の向上は間違いなくバッテリー寿命向上に寄与します。初代リーフ初期型ではモジュール(セルが束ねられた容器)に通風孔がほとんどなかったのに対して、中期型(2012)以降は角部がスリット状になっていることがわかります。さらに、初代後期型(2015)30 kWhバッテリーではモジュールあたりセル収納数が4から8に増大し、かつモジュール外殻の隙間が大きい構造に変化しています。カットモデルの切り方によるのかもしれませんが、放熱版のような部材も見られます。なお、新型(2017)の40 kWhバッテリーは初代後期型(2015)30 kWhバッテリーと同じモジュール構造をしているように見えます。新型リーフのバッテリー画像では放熱板が見られませんが、発表会の映像(5:00頃)では放熱板が描かれているので、カットモデルで見た目のために放熱板が省かれているのだと思います。
バッテリーモジュールの電極端子と逆側の形状を簡単に図にしてみました。灰色の部分が開放部です。コストダウンのためバッテリー冷却機構を備えられなかったリーフが、どうにかバッテリーの冷却効率を上げようと努力してきたことがうかがえます。おそらく、初期型は熱問題よりも機械的な破壊による発火を懸念していたのでしょう。モジュール内の正確な情報はわかりませんが、ワールドプレミアで公開された動画に一瞬出てくる製造工程を見ると、モジュール内は金属製の棚のようになっており、セルを挿入しているように見えます。この構造であれば金属支持体を通して放熱が進むため、ラミネート型セルが円筒形セルよりも放熱が有利という点を活かせるはずです。
ちなみに、初代リーフのバッテリー熱劣化問題については、以下のサイトに詳しくまとめらています。初代リーフのバッテリー劣化問題について日産本社に物申すなど、なかなか強力な内容です。電気自動車の技術的な問題について関心がある方にはぜひ読んでいただきたいサイトです。
電気自動車の電池寿命は厳しい! リーフユーザーへ
調べてみると、リーフのバッテリーを分解した結果をリポートしている方がちらほらいらっしゃいます。分解レポートを調べていけば、バッテリーモジュールの構造変更についてより知見が得られるでしょう。
例: オール電化