電気自動車はエンジンを使わないので、音や振動が少ない。静粛性を売りにするため、日産リーフでは初代ZE0と比べて2017年にモデルチェンジしたZE1で吸音材を増設するなど、車内の静粛性を高める工夫が行われている。私も初代ZE0と2代目ZE1に乗った経験から、ZE1は車に乗り込んでドアを閉めた時点で静粛性の違いがわかるほどである。
車内の静けさに慣れてしまうと、今度は急速充電器からの騒音が気になりだしてくる。充電中には急速充電器から低い音と高い音が聞こえる。低い音は空冷ファンの音であり、充電停止後もしばらくは聞こえてくる。高い音は電流が流れている間だけ聞こえてくる音であり、おそらくは電気回路に由来する磁励音だ。磁励音は電気回路が交流電流で振動することで生じる音で、生活の中でわかりやすいのは電車が走行するときに聞こえる。試みに急速充電器で充電中の音響スペクトルをSpectroidで測定した結果が下の図である。16,000Hz付近にピークを持つことがわかる。
CHAdeMO規格では急速充電器の正面1mの位置で65dB以下という騒音の基準があるようだが、高い音なので耳障りだ。利用者としては、充電待ちの間、車内に居たり、離れたところにいたりすれば問題ない。むしろ急速充電器を設置する施設の管理者にとって悩みの種になるかもしれない。電気自動車乗りからすれば急速充電器はありがたい存在だけれど、それ以外の人にはただの騒音源なのだから。新しく急速充電器を設置する施設は、不特定多数の客が通行するような主要な動線からは離れたところに急速充電器を設置するといいだろう。ショッピングモールなどであまり便利な場所に急速充電器があると駐車場のEV充電マスがエンジン車に占有されてしまって充電できないケースもあるのだから、電気自動車乗りは入り口から遠くても不満に思わない。