電柱をEV充電の拠点に 東電、普及へコスト半減 日経新聞2019/6/11
電柱に隣接させて急速充電器を設置できるような工法をつくったことで、設置コストを下げたというニュース。工事費用が通常300万円程度なのに対して半減できるという。東電は首都圏に100台の急速充電器を設置し、需要に応じて増設する予定。
記事にある写真の急速充電器は20~30 kW級のタイプなので、50kW級やこれから増えるだろう90kW級に対応できるのかが気になるところ。
工法それ自体というよりも、地権者との交渉から工事までを一貫して請負うという新しい商品を作るというのが東電のねらいだろう。電力会社らしく急速充電器向けの電力プランをつくるというのは面白い。
ただ、EV乗りの立場から言うとEVが増えるからといって急速充電器をガソリンスタンド並みにどこにでもあるようにしなければならないかという、そうではない。これから電池容量が大きいEVが増えていくとしたら、より高速な急速充電器の設置と、「ながら充電」をできる場所を増やすことが効果的だと考えている。
より高速な急速充電器の必要性はわかりやすい。単純に考えれば、2倍の電流で充電すれば、1/2の時間で同じ電力量、同じ時間で2倍の電力量を充電できるからだ。急速充電器はどこかへ出かける経路上での充電に使われることから、充電に要する時間が短いことは良いことだ。また、初期のころは電池容量が小さかったので、充電器より電池の性能が限界を決めていた。日産ディーラーでよく見る44kWの充電器で30分充電すると20kWh強が充電できる。初代リーフの電池は安全マージンを含めても24kWhなので、すぐに充電率があがってしまいフルパワーで充電できる時間は15分そこらだった。2代目のリーフでは電池が40kWhになり、44kW充電器のフルパワーでほぼ30分間の充電が可能だ。さらにe+では電池が62kWhになったので、電池よりも急速充電器の方が限界になった。e+と時を同じくして90kW急速充電器の配備が始まったのはこういうわけだ。
急速充電の話をすると充電のために30分待っていなければならないような気持になるが、待っている必要はない。たとえば、食事をしながら、買い物をしながら、映画をみながら、宿泊しながら、というように、何か別のことをしている時間に車を充電しておければ、充電時間が長いとか短いとかいうことを気にする必要はない。いまでも自宅で寝ながら充電しているEVオーナーは多いわけで、そのような人は電池が持つならわざわざ出先で充電することはない。私の実感としても、リーフの電池が40kWhになってから高速道路のSAや道の駅で充電待ちをすることが減ったように思う。40kWhあれば高速道路を走っても250kmくらいは走れる。電池がなくならないのだから出先で充電する必要がないのだろう。マンションに住んでいたり、自宅外に駐車場を借りているような人が普通充電設備を設置しやすくしたり、大型商業施設のような人が集まってきてそれなりの時間を過ごす場所に充電器がたくさん設置されるようになれば、充電の待ち時間というのは主観上なくなる。
電柱を利用して20kW級の中速充電器が安く設置できるようになると、ショッピングモールや映画館は相性がいいと思う。その際には30分の制限をなくしてほしいものだ。特に映画は30分では終わらないので、2~3時間ほったらかしにしておけるような環境がほしい。充電待ちの人が勝手に抜き差しできるように待機場所を確保してくれるだけでもいいのだけれど。
2019/6/30追記
EVSmartブログに東電取材記事が掲載された。道の駅や高速道路のPASA、商業施設などがターゲットだという。なるほど大規模な施設なら駐車場に隣接する位置に道路や駐車場があるのだから、場所の都合がつくわけだ。同じように普通充電器の親機を設置して、近接する数台分の駐車マスで使えるようにしてほしいなあ。