製造業で研究者をやっていると、思いもしない仕事をすることがある。大学・大学院で学んだこと、入社以来の専門とは異なった分野の業務に携わることになったとき、なじみのない分野で最低限の科学的知識を吸収する必要に迫られる。
土地勘もない分野では、どの本で勉強すればよいかもわからない。わかりやすい入門書はどのようにして手に入れるのが良いだろうか。
幸いなことに、自然科学の分野では高校生が使う理科の資料集が安価に手に入る。そのうえ分かりやすい。
フォトサイエンス (数研出版) 物理 化学 生物 地学
サイエンスビュー (実教出版) 化学 生物
高校生が卒業までに学ぶ程度の知識や概念すら持っていないと、専門家に質問することすらできない。高校の理科の教科書程度の知識はあるというなら、大学の初年次教育から学部教育向けに使われている教科書を読んでみよう。学びたい分野でどのような本を読むのが適切かを知るには、ある程度大きな大学の生協書籍部を訪れて、教科書コーナーをめぐるのが効率的だ。
たとえば、生物の知識が義務教育レベルの人が、ミトコンドリアって何?というような人が、生命科学系のことを学ぼうと思ったときに、間違ってもTHE CELLを手にとってはならない。時間の無駄だ。高校生物の資料集や、せめて大学教養教育の教科書を読む方が、学習者のためになる。
ところで、今の時代はネットで調べれば何でもわかるという人がいるが、この見方は間違っている。ネットで検索するには適切なキーワードを思いつく必要があるが、それには知識や概念が身についている必要がある。また、20年前ならいざ知らず、近年では広告目的で間違った内容を平気で書き連ねている上に検索上位に並ぶページが多い。現代のネット上では、正しい情報を見つけるだけで一苦労。それよりも、書店に1,000円払って本を買った方が楽だ。