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リチウムイオン電池と燃料電池は適材適所で

エコカー界隈では、次世代自動車は電気自動車(EV)か燃料電池車(FCV)かという議論が繰り返されています。FCVがトヨタMIRAIくらいしかない現状ではEVが有利に見えるものの、航続距離と充電時間の問題から、ガソリン車と同様に使えるはずのFCVが最終的には有利になるという意見が見られます。EV vs. FCV論争に決着がつくのは、おそらく何十年も先の未来の話で、それまでは不安定な過渡期にすぎません。

EVにしろFCVにしろ、時代の最先端の技術に違いはないわけで、未来を先取りする気分で私は日産リーフに乗っています。実際に車を購入するときに問題なのは、価格です。自分のお財布の限界を超えてモノを買うことはできません。私が乗っている2代目リーフXは400万円から補助金40万円を引いて自己負担額360万円でした(2017/9)。一方、トヨタMIRAIなら車体724万円から補助金202万円を引いて自己負担額522万円です (2018/9)。私は夢を買おうと背伸びしてリーフを購入しましたが、さらに150万円近く上乗せしてFCVを買うのは不可能です。

ところが、最近になって驚くべき記事を読みました。トヨタはMIRAIを4年リース価格362万円で販売しているというのです。仕組みとしては、いわゆる残価設定ローンで4年後の買い取り価格を50%に設定しているそうです。国からの補助金は相変わらず202万円出るので、正味160万円。残価設定ローンの金利が乗って最終的な自己負担額は220万円くらいでしょう。これは背伸びすれば手が届く!
近所に水素ステーションがない問題 (2018/3時点で全国100か所)と、水素価格がガソリン並みに高くランニングコストが案外高い問題が解決できれば、あるいは気にならなければ、FCVをマイカーにすることも現実的に可能です。実際に、愛知県では休日にマイカーとしてMIRAIに乗っている方をちらほら見かけます。

FCVの普及を妨げているのはコストの問題が大きいです。車体価格が高い問題はいずれ解決されるかもしれませんが、水素補充インフラの整備にも大きなコストがかかります。たとえば、水素ステーションの建設に1か所5億円(ガソリンスタンドは7千万円)ほどかかるといわれています。ガソリンスタンドは全国で3万件ほどありますが、FCVが普及期に入ってコスト低下が起きない限り、水素ステーションを全国津々浦々に設置するのは難しいでしょう。

こういう書き方をしていることからお分かりなると思いますが、マイカー、乗用車の分野においては、FCVよりEVが現実的だと私は考えます。充電インフラは家庭や宿泊施設などに設置される普通充電器なら30万円、道の駅やサービスエリアに設置される急速充電器でも1000万円程度です。数字の出所は2013年の資料ですから、普及期に入ればもう少し下がるでしょう。水素補充インフラと比べれば桁で安いのです。結果として、2017/3時点で急速充電器の数は7千件を超えています。都市部ではよく見かけるようになり、自家用車としてどうにか運用できるレベルになっていると思います。

それでは、FCVに未来はないのでしょうか。私はそうは思いません。むしろ、FCVに適した車の使い方があり、コストが高い過渡期においても優位性を発揮できる分野があると考えています。

最近、ドイツの地方鉄道に燃料電池列車が導入され運行を開始したというニュースが出てきました。ドイツの鉄道は電化区間が49%でディーゼル機関車が多く走っており、電化工事を進めるよりも燃料電池列車を導入する方がコスト面で優位になったそうです (日本は電化区間が7割弱)。鉄道のように決められた経路を決められたスケジュールで移動するのであれば、水素補充インフラの建設費は最小限で済みます。燃料電池を鉄道に使うのはインフラ整備コストの点で適しています。

日本でも燃料電池列車の研究開発は行われています。ただし、非電化路線への電動車両導入という点では、EVが先行しました。JR東日本の烏山線では、2014/3から宝積寺駅から烏山駅の約20 kmでEV-E301 系(ACCUM)が運行しています。宝積寺駅と烏山駅で停車中に急速充電してEV走行、電化された宇都宮線では普通の電車と同じように架線から電気を取り込んで走行しています。2017/3から烏山線はすべてEVに置き換わっているそうです。

鉄道においてFCVを選択したドイツと、EVを選択した日本。この違いは何なのでしょうか。私の予想では、運行区間の距離が選択を分けていると考えています。FCVを導入したドイツのブクステフーデ駅からクックスハーフェン駅の間は124 kmあり、烏山線の6倍もの長さです。自動車のFCVとEVの比較で航続距離が問題になるの同じく、鉄道でも長い距離を自立走行するにはFCVの方が適しています。

航続距離の違いは、水素とリチウムイオン電池のエネルギー密度の違いに由来します。水素タンクにしろ、リチウムイオン電池にしろ、車両のエネルギー源に使うことを考えると、重すぎては使えないし、大きすぎても使えないという制限があります。したがって、同じ重量でどれだけのエネルギーを蓄えられるかを表す重量エネルギー密度、同じ体積でどれだけエネルギーを蓄えらえるかを表す体積エネルギー密度の両方が高いエネルギー源が求められているわけです。

ガソリンと比べて、水素のエネルギー密度は重量エネルギー密度がやや高く、体積エネルギー密度が1/6ほどです。リチウムイオン電池は重量でも体積でもガソリンの数十分の1から1/100程度のエネルギー密度しかないので、現状のEVは大きな走行用電池を搭載せざるを得ません。また、FCVなら水素タンクのほかに燃料電池ユニットや補助バッテリーがあったり、EVなら急速充電用の配電装置や走行用電池の冷却ユニットがあったりして、システム全体としては前述の値よりもエネルギー密度が小さくなります。

リチウムイオン電池のエネルギー密度を桁で上回るような二次電池が今後20年以内に登場する可能性はほぼありません。ネットで最新の情報を調べてリンク先のような計算をすればエネルギー密度は自分で計算できますので、「革新的」だとか「画期的」という電池のニュースがあったら現状と比較してみてください。私の乗っている日産リーフ (2017) の電池は体積エネルギー密度460 Wh/L, 重量エネルギー密度224 Wh/kgです。電池パック全体で300 kgなので、重量エネルギー密度を計算すると132 Wh/kgですから、電池のまわりにいろいろと追加したシステム全体では見かけの上でエネルギー密度が小さくなるのがわかると思います。

EVの航続距離がリチウムイオン電池のコストで決まるなら、電池が安くなれば航続距離が延びます。しかし、実際にはエネルギー密度という材料の性質で決まっています。材料の研究開発は難しいので、10年で2倍になったら万々歳という程度の進歩しか期待できません。

5人乗りの自家用車であるリーフが満充電で高速を走ったとき、ようやく300 km走れるくらいのレベルになりました。それでは、より大きく、重たい車両の航続距離はどうなるでしょうか。大型車両にはより大型の電池を搭載できるとはいえ、大型バスや大型トラックがリチウムイオン電池の電力だけで長距離走行するのは難しいだろうと予想されます。逆にいえば、このような分野はEVよりFCVに優位性があります。

長距離走行する大型トラックや大型バスは、ある程度走行ルートが決まっているという点もFCVに向いています。バスターミナルや物流拠点と高速道路のサービスエリアに絞って水素ステーションを建設すれば、効率的に全国をカバーする水素インフラが成立するでしょう。前述した鉄道についても、非電化区間が長い四国、中国、北海道地方はコスト次第でFCVに置き換えることができる可能性があります。

EVにしろ、FCVにしろ、エネルギー密度で考えれば、生活の足はEV、長距離移動や大型車はFCVが向いているとわかります。2018年の時点では乗用車としてのEVが普及しだしていますが、大型車のような社会を支える働く車まで考えると、将来は適材適所に住みわけることになるでしょう。


2018/9/30追記
9/27にJR東日本とトヨタが燃料電池で連携することを発表しました。本稿で述べたように、非電化路線やバス路線への燃料電池車両投入はインフラ整備コストからして現実性のある分野です。水素燃料の貯蔵・輸送技術をはじめとして、まだまだ発展途上にあるのがFCVの実状。技術の進歩は使われることによって促進されるので、実証実験ではなく通常の営業運転にFCVが投入されることで、より現実的な技術に成長することが期待されます。

2018年7月

7月の走行距離は1,944 kmでした。

電費は7.4 km/kWhで6月と同等でした。6月から非常に暑いので、7月になっても大してエアコンの負荷が変わらなかったのでしょう。ようやく旅ホーダを感じられるような長距離を走ることができました。

月額2,160円のZESP2に普通充電の課金で合計2,713円に対して、ガソリン146 円/Lとして燃費105 km/Lと同等です。

急速充電 22回、普通充電は10回、急速充電1回あたりの走行距離は88 kmでした。

遠出をする際は宿泊先で普通充電をすると便利というのを如実に感じました。