月別アーカイブ: 2018年8月

日産リーフの電動ブレーキ不具合

ショッキングなニュースですが、普通に乗っているだけの方には関係のない話でした。LeafSpyを使用している方には関係あるかもしれません。

[特報]日産リーフ、走行中に電動ブレーキが作動しない脆弱性 2018/08/29 05:00 日経XTECH

記事中では、電動ブレーキと機械ブレーキのうち、電動ブレーキが動作しなくなる条件があると述べられています。電動ブレーキが何を指すのかはっきりしませんが、走行中に作動できて乗り心地が変わるという記事の文章から考えると、回生ブレーキのことを言っているのだと思います。

不具合が起こる条件が、CANに接続して車載コンピュータを診断モードに移行させるというものだったので、普通に乗っているユーザーには関係ありません。ただ、LeafSpyを使っているユーザーはCANにアクセスしているので、関係するかもしれません。LeafSpyでデータを読み取っている状態が、診断モードのまま走行している状態にあたれば話ですが。

必要なサンプルサイズの求め方

測定には不確かさが付きまとう。n回測定したデータを平均して、実験値とするのが一般的である。n回とは具体的に何回測定したらいいのかを見積もりたい。

n回の測定値を単純平均して得られた値をAverage (ExcelでAVERAGE)、不偏標準偏差をSD (ExcelでSTDEV) とすると、標準不確かさは SD/sqrt(n) で求めることができる。したがって、実験値の求め方としては Average ± SD/sqrt(n) となる。

不確かさを持った値を用いて、何かしらの理論式に代入するなどの計算を行う場合は、不確かさの伝搬を考える必要がある。具体的な計算は東北大多元研のページを見ると便利。

実験値が求まったら、次は実験値の不確かさを目標以下に小さくすること考えたい。母平均の区間推定における必要なサンプルサイズの計算フォームを参考にすると、平均値μから±δの区間にあることを有意水準5%で示すのに必要なサンプルサイズnは

n > (1.96 * (STDEV/δ))^2

物理ではa±bという実験値に説明がなければ、通常bは「1シグマ」である。有意水準5%というと95%信頼区間を求めていることになるが、1シグマだと68%信頼区間を求めることになる。

n > (1.0 * (STDEV/δ))^2 = (STDEV/δ)^2

 

統計やるのは久しぶりすぎて理解してないので、要復習。サンプルサイズの決め方自然科学の統計学あたりを見てみるとしっかり学べそう。

そもそも実験誤差って何?というレベルの人には誤差の理論(東京医科歯科大)を見せるのが楽そう。

なお、雰囲気で統計をやっている人のお約束として、サンプルサイズ (標本の大きさ) とサンプル数 (標本数) を混同するというのがある。使いやすい踏絵である。

日付の加算減算 (VBA)

毎月更新する帳簿に使用期間を自動で記入するプログラムを作成することを考えた。エクセルのVBAでは日付をDateで取得できる。さらに、年、月、日、時、分、秒のどの部分を取り出したいかはFormatで選択できる。たとえば Format(Date, “yyyy.mm”) とすれば、現在の年月が取得できる。

今月の21日から来月の20日までという表示をしたい場合はどうすればよいか。今月の21日は文字列の結合を使って  Format(Date, “yyyy.mm”) & “.21″と書ける。それでは、来月の20日はどうするか。単純に数を加算する式 Format(Date, “yyyy.mm”) + 0.01 & “.20” を書いてみるとそれっぽく動作するが、繰り上がりが起きる9月から10月や、12月から1月がうまく動作しない。
ここで安易に場合分けをして書いてはいけない。DateAdd関数を使えば、日付や時刻の計算は簡単にできる。使用例はDateAdd VBAで検索すればたくさん出てくる。加算する値を負にすれば減算にもなるので、前の月や前の年といった過去の日時も取得できる。

例: 先月21日から今月の20日
Dim date_previous As Date
Dim date_now As Date

date_previous = DateAdd("m", -1, Now)
date_now = Date

Sheets("hoge").Cells(1, 1).Value = Format(date_previous, "yyyy.mm") & ".21~" & Format(date_now, "yyyy.mm") & ".20"

新宿から扇沢(黒部ダム、立山)日帰り

リーフの弱点として、急速充電を繰り返すと電池温度が上がり、電池保護のため急速充電の出力が抑制されるという問題があります。今回は、旅程をうまく計画することで、電池温度の上昇を防ぎつつ長距離移動した例を報告します。


出発地点は東京との新宿駅付近、目的地は長野県の扇沢駅です。立山登山のため、大人4人とそれぞれの荷物を積載しています。基本的に高速道路を利用し、制限速度でプロパイロットを使用しています。エアコンは25度オートです。

出発前の準備として、普通充電で満充電にしています。新宿付近では普通充電が利用できる駐車場が複数あります。満充電かつ電池温度が気温程度まで下がっている状況でスタートすることで、急速充電をなるべく使わず、電池温度も上げない運用ができます。

新宿を出発して中央道を進むと、諏訪湖SAまでは余裕で到達できます。あまり飛ばすと空気抵抗が増えて電池の減りが早くなります。中央道は制限速度80 km/hなので、これを守っていれば十分です。諏訪湖SAで30分充電すれば、信濃大町の日産ディーラーまで到達できます。信濃大町から扇沢まで標高は上がりますが、水平距離は大してありません。帰りのことを考えると、先に急速充電しておくことで、黒部ダム・立山に行っている間に電池が冷却されることが期待できます。

満充電で新宿を出発し、諏訪湖SAと信濃大町で急速充電をした結果、およそ6時間で扇沢に到着しました。途中で30分ほどコンビニ休憩をしています。


帰りは扇沢到着から12時間以上たっているので、電池温度は十分に下がっていました。信濃大町で充電しておいたので、そのまま諏訪湖SAまで到達できました。ここで帰路1回目の急速充電です。車に表示される航続距離だと新宿まで行けるか微妙なところですが、実は諏訪湖SAから新宿まで到達できました。中央道は諏訪湖SAから八ヶ岳PAのあたりで標高1000 mまで登ります。ここから新宿へかけては基本的に下り道なので、あまり電池を消耗せずに走行することができます。

帰り道は5時間ほどで扇沢から新宿に戻ることができました。


新宿から扇沢までは、往復550 km、標高差1400 mほどです。そもそも日帰りするのは少し辛い距離ですが、充電のやり方によっては問題なく行って帰ってくることができます。

酷暑の夏、40 kWhリーフは一日の急速充電を2回までにしたい

日本各地で40度近い最高気温が報告される中、愛知から福島まで、一日で640 kmほど走ってきました。直面したのは、急速充電の出力抑制でした。リーフの走行用電池に強制冷却シスステムがないことに起因します。

高温時の急速充電出力抑制は、30度くらいから発動します。また、ある時期以降に納車されたリーフ(ZE1)は私が乗る初期ロットよりも出力抑制が弱い設定になっているようです。


出発地点は東名高速の音羽蒲郡IC。宿泊地の近くにファミリーマート豊川御油店の急速充電器があったので、前日のうちに88%まで充電しておきました。この時点での航続可能距離は243 kmと表示されていました。

愛知の気温は朝7時ですでに27度。エアコンは26度オート設定でかけっぱなしにしました。走行条件は基本的に制限速度でプロパイロットです。

東名高速から東海環状自動車道を経由し、中央道へ。ナビに促されるまま、長野県に入ってすぐの阿智PAで1回目の充電をしました。出発地点から150 km、標高920 mです。30分で22%から71%まで回復したのですが、すでに走行用電池の温度が40度を超えてしまいました。阿智の気温は10時ごろでも27度と涼しかったのですが。

さらに高速道路を北に進みます。次の充電は長野自動車道 姨捨SAです。阿智PAから140 kmほど、松本側から長野市側に山を越えた後の高い場所にあります。標高は620 mほど。SAの下には日本三大車窓に数えられる姨捨駅があり、SAからも千曲川沿いの美しい景色を眺めることができます。
標高が高いだけあって、正午ごろでも気温は29度でした。30分の急速充電で19%から56%へ回復。阿智PAでは49%分回復したのに、姨捨SAでは37%分しか回復していないことから、温度上昇によって充電器の出力抑制が始まっている気配を感じます。

姨捨SAからは上信越自動車道を通って新潟へ。途中、妙高SAで10分ほど継ぎ足し充電しました。急速充電では電池の温度が上昇するので、急速充電の回数は減らしたいところですが、すでに45度以上になっていました。外気温がいくら高いと言っても、40度は上回りません。そこで、充電時間を短くして、電池に負荷がかかりにくい走り方をすれば冷却されるのではないかと考えました。長野から新潟は基本的に下りになるので、高速走行といえども電池への負荷は小さいはずなので。

このような目論見が功を奏したのか分からないうちに、新潟の米山SAでの急速充電で電池温度が50度に達しました。リーフのインパネに表示される電池温度は数字が書かれていませんが、右側の赤い目盛り一本目が50度のラインと思われます。Leaf Spyで見ていると、3つある電池温度計のうちひとつが50度を超えたタイミングで、インパネの表示が変わりました。おそらく右端の赤い線は60度かそれより少し低い温度です。市販のリチウムイオン電池は許容上限温度が60度であることが多いので。

この後は北陸自動車道 栄PA磐越自動車道 阿賀野川SA磐越自動車道 西会津PA 磐越自動車道 磐梯山SA とSA巡りをする羽目になり、短時間の継ぎ足し充電を含めると一日で8回もの急速充電を経験することになりました。日本海側から標高570 mの磐梯山SA付近に向けて登りになるのに加えて、4回目以降は電池温度が常に50度以上になっていて、通常時の半分くらいしか充電できず、距離を走れないので急速充電の回数も増えるという悪循環でした。


結局、真夏に高速走行をして急速充電を繰り返すと、充電器の出力抑制が避けられません。使ったのはすべて高速道路によくある40 kWの充電器でしたが、1回目の充電に比べて、2回目には2割、3回目に5割、4回目には6割ほど出力抑制されました。6割も出力抑制されると、コンビニなどにある20 kWの充電器、いわゆる中速充電器と変わりません。

急速充電器の出力抑制は、リーフの車載コンピュータが電池温度を監視して、充電器に出力抑制を支持しています。出力抑制は急速充電器の方ではなく車の方に原因があるので、充電器を変えても問題は解決されません。逆に言うと、普段はあまり使わない20 kW中速充電器を、長距離移動する際には積極的に利用すると良いでしょう。最初から中速充電にしておけば電池温度は上がりませんし、電池温度が上がってしまっても、中速充電で十分車が許容するフルパワーを出せます。

電池の温度が一旦上がてしまうと、なかなか冷却されません。福島ではアクティブリゾーツ裏磐梯に宿泊したのですが、朝8時になっても電池温度が35度くらいありました。宿泊地は高原リゾートなので明け方の気温は20度を下回るほどだったのにも関わらずです。

急速充電の回数を減らすには、上で述べた中速充電に加えて、普通充電を活用することが有効です。観光施設や駐車場で普通充電設備を備えたところを選んで利用する。特に、長時間滞在する場合は普通充電でもそれなりの量の充電が可能です。さらに、普通充電では電池温度が全くと言っていいほど上昇しません。急速充電の出力抑制が入るような高温時には、普通充電中に電池温度は低下していくほどです。

今回の度では、アクティブリゾーツ裏磐梯で朝から普通充電をかけている間にホテルの目の前にある五色沼を散策していました。また、翌日の宿泊地が仙台だったので、仙台市内の普通充電設備がある駐車場を探したところ、ホテルに近い駐車場でかつ夜通し普通充電できる場所が何カ所かありました。


福島の翌日に泊まった仙台では、寝ている間に普通充電で100%まで回復しました。車の外気温計40度という表示になるくらいには暑い日でしたが、ホテルを出る前に乗る前エアコンを起動していたおかげで車内は冷えていました。

仙台から帰る道は、これまで走ったことがない常磐道にしました。仙台から神奈川までは400 km強。途中の充電スポットはナビにおまかせ。フル充電のリーフは下道を300 km近く走れるので、飛ばさなければ高速走行しても200 km以上走れます。仙台から200 km近く離れた常磐自動車道 中郷SAでようやく一回目の急速充電。一回目の急速充電はまだ電池温度が上がっていないので、走行距離120 km分くらいが充電されます。おかげで次の急速充電をしたのが常磐自動車道 守谷SAというほぼ東京の入り口のところにまで来ました。守谷SAで充電すると、今度はもう神奈川県まで帰れます。

この旅の経験をまとめると、以下のようになります。

  • 真夏の急速充電は一日あたり可能なら2回まで、できれば3回までになるように旅程を立てる。
  • 長距離走行する場合は、前日までにできるだけ満充電に近づけて、かつ走行用電池の温度を下げておく。

日産のblogでも同様の内容が紹介されているので、オーナーの方は参考にしてください。

一日で600 km走るよ!という場合はどうしようもありませんが、一日の移動距離が400 kmくらいまでなら、40 kWhリーフでもそこまで困りはしないと感じました。