月別アーカイブ: 2017年12月

急速充電の所要時間に関する基礎知識 -データ編-

急速充電にかかる時間の話について、実際の充電時に取得したデータを掲載します。

充電器 44 kW (日産ディーラー)
外気温 11度
電池温度 温度計の43%(充電前)から51%(充電後)に上昇

充電時間が20分、充電率が50%を越えたところで、充電電流の減少が始まりました。充電開始30分時点では、充電開始20分時点の8割まで電流が減少しました。

横軸を充電率としたとき、電圧がほぼ時間に比例して上昇し、電圧が380 Vを超えるあたりから電流低下が始まっていました。充電率3%のとき、44 kW充電器で343 V 107 Aだったので、充電率20%以下の領域では充電率20%以上の領域に比べて電圧変化が大きそうです。

時間 /分 充電率 /% 充電出力 /kW 電流 /A 電圧 /V
0 17 37 107 355
1 18 38
2 19 38
3 21 38
4 22 38
5 24 38
6 26 39 107 366
7 28 39
8 29 39
9 31 39 107 368
10 33 39
11 35 39
12 37 39
13 39 39
14 41 39 107 374
15 43 40 107 374
16 45 40
17 47 40
18 49 40
19 50 40 107 378
20 52 40
21 54 40
22 55 40
23 57 39 102 382
24 59 37 99 383
25 61 36 96 384
26 62 35 93 384
27 64 34 90 385
28 65 33 87 386
29 67 32 84 386
30 68 31 81 387

30 kWhモデルの充電率と充電電流の情報を見つけました。

外気温6℃、日産ディーラーの急速充電器(44 kW)で充電して、充電率70%まで電流値が変わらないとされています。簡単のために安全マージンを無視して電池容量30 kWhの70%だとすると、21 kWhを充電した時点から電流が減少することになります。

電池容量が40 kWhの場合は充電率50~57%の時点で電流が減少し始めました。電池の貯えた電気量としては30 kWhモデルでも40 kWhモデルでも21 kWhあたりです。走行できる距離は電気量に比例するので、充電率が低い範囲で運用している分には、あまり両者の違いは感じられないかもしれません。もちろん、40 kWhモデルは電気を入れようと思えば予めたくさん入れておけるので、家庭などで出発前に満充電にできる方は大きなメリットがあります。

 

望遠ズームレンズで撮影したオリオン大星雲

以前から星空の撮影に興味を持ってきましたが、どうせなら望遠鏡で見えるような美しい色とりどりな天体を撮影してみたいと思うようになってきました。

天体望遠鏡を持っていなくても、カメラの望遠レンズの中にはそのまま天体観測に使えるものもあります。たとえば、Xマウントの望遠ズームレンズXF100-400mmを使った例が報告されています。

今回の撮影のために、以下の2点を購入しました。
Vixen 星空雲台ポラリエ
Velbon 自由雲台 QHD-33
三脚は従来使っていたもの、望遠レンズXF100-400mmは知人から拝借しました。

撮影を試みた夜は月明かりが眩しくて、あまり星の写真を撮るのには適していませんでしたが、ものは試しに撮影してみました。

オリオン大星雲
FUJIFILM X-T2+XF100-400mm, 焦点距離400 mm, F5.6, ISO400, SS 60 s, トリミングのみ。

プレアデス星団(すばる)
FUJIFILM X-T2+XF100-400mm, 焦点距離400 mm, F4.5, ISO200, SS 60 s トリミングのみ。

おまけで月
FUJIFILM X-T2+XF100-400mm, 焦点距離400 mm, F5.6, ISO800, SS 1/2000 s, トリミングのみ。

月明かりのない夜に、さらに長時間高感度で撮影してみようと思います。

電気自動車向け全固体電池の現状 (2017/12)

2017年は、トヨタ自動車が全固体電池で電気自動車に参入というニュースで、電気自動車界隈がたびたび盛り上がりました。ここで一度、全固体電池開発の現状を調べてみました。

まず全固体電池とは何か。従来のリチウムイオン電池では、正極と負極の間は電解液という液体が使われています。リチウムイオン電池の電解液は有機溶媒を使っているので、可燃性です。全固体電池では、電解液の代わりに燃えにくい固体電解質を用います。電池に液体成分を含まないので、全固体電池という名前が付けられました。リチウムイオン電池の根本は変わりません。

リチウムイオン電池で怖いのは、反応副生成物が析出することで正極と負極がショートして急速に化学反応が進行し、過熱、発火に至るというケースです。電解液型のリチウムイオン電池では、正極と負極の間にセパレータという壁を設けてショートを防いだり、電解液に添加剤を加えて過熱防止や過熱しても発火しないような工夫がなされています。
全固体電池では、電解質が固体であるために正極と負極が隔離されているため、ショートは起こらずセパレータも要らないというメリットがあるといわれています。

全固体電池の開発で課題だったのが、高いイオン伝導度を示す固体電解質の開発です。一般的に、液体の中よりも固体の中の方が、物質の移動は遅くなります。リチウムイオン電池はリチウムイオンが正極と負極の間を往来することで電流が流れるので、液体と同じくらいリチウムイオンが動きやすい固体の電解質が必要です。言葉にすれば簡単ですが、作るのは難しい。ところが、最近良さそうな固体電解質が開発されたことから、全固体電池の実現性が高まり、注目を浴びています。

EV次世代電源「全固体電池」 20年代前半実用化へ

 東工大の菅野了次教授とトヨタなどは、電解液よりもリチウムイオンが約2倍通りやすい電解質を見つけ、出力を3倍以上に高めた。菅野教授は「固体電解質と相性がよい電極の探索が今後の課題」と話す。トヨタは20年代前半の実用化を表明している。

宣伝文句としては、「3分で充電も視野に」ということも言われいます。インフラ整備の必要もありますが、そんなことが可能な電池が実現できれば、文字通り世界が変わる可能性を秘めています。トヨタはあと5年、2022年ごろに全固体電池を搭載したEVを発売するともいわれています。

全固体電池すごい!という話を挙げればきりがないのですが、逆に問題点はないのでしょうか。最近になって、気になる報道がありました。全固体電池の急速充電時にショートが起きるというのです。これでは固体電解質を使うからショートしない、セパレータ要らないという売りが成立しません。実験条件がわかりませんが、「原理的に安全」と言っていたのが覆ってしまいました。(※トヨタは安全側にかなり厳しいという噂なので、実用上は問題ないかもしれない)

新材料の報告が契機に 2017/11/20付日本経済新聞 朝刊

現状では固体電解質は開発途上で、化学反応のメカニズム解明が必要な段階だ。急速充電時に内部に結晶ができてショートの原因となる問題もみつかった。

全固体電池の開発状況としては、鍵となる固体電解質の開発で良いものができたけれど、電極活物質とのすり合わせが十分でなく、使える電池、量産できる電池にするにはまだ時間がかかりそうだという段階にあるのだと思います。

EV向け本命「全固体電池」5年で実用化へ 開発第一人者、大阪府立大・辰巳砂教授に聞く

「日本の車メーカーのレベルは高いので、車向けは5年で実用化できると考えている。とはいえ、その時点でのEV用電池のメインは液体電解質のリチウムイオン電池であろう。しかし一旦実用化されれば、全固体電池はポテンシャルが高いので、いずれ液体型電池を上回る可能性は高い」

電解液を使うリチウムイオン電池の改善が進んでいく中で、全固体電池が出るのがあまり遅いようだと競争にならないかもしれません。かつてリチウムイオン電池は発熱発火問題のために普及が遅れ、ニッケル水素電池の後塵を拝していたものの、製造技術向上により結局はエネルギー密度の高いリチウムイオン電池が市場を席捲したということがありました。全固体電池ははたして電解液型のリチウムイオン電池に車載向け市場で勝てるのでしょうか。


追記

2030年に5割を電動に トヨタ、パナソニックと提携でEV開発加速
2017年12月13日にトヨタとパナソニックが車載電池開発で「協業の検討を始めた」という発表を行いました。パナソニックはプリウスPHVの電池サプライヤであり、トヨタからすれば自然なパートナー選択です。
開発の対象となるのは、角型のリチウムイオン電池で、全固体電池ではありません。トヨタとしても全固体電池はまだ先ということなのかもしれません。


日経エレクトロニクスの2018年1月号が全固体電池特集のようで、わかりやすい図が載っていました。