月別アーカイブ: 2017年8月

急速充電器を支える電気回路技術

日経エレクトロニクスの2017年9月号に電池関連の記事が載っていたので、おもしろく読みました。

Liイオン2次電池に製造革新、樹脂で電極構造や集電体を実現

現行のリチウムイオン電池は、電子とLiイオンを出し入れする活物質から金属の集電体を通して外部回路に電気を取り出しています。集電体を樹脂に置き換えることで、コストダウンや電池の構造を変えられるという話です。

全固体電池を大幅に安く、東工大が新型電解質材料

固体電解質のLiイオン伝導度はすでに液体電解質の10 S cm-1 を上回っているそうで、コストや耐久性が問題なければ製品化までゴリゴリ開発を進められそうです。
東工大の菅野研はトヨタ自動車と全固体電池の共同研究を進めており、発見された新素材は今ごろトヨタの研究所で製造適正やら耐久試験やらにかけられていることでしょう。トヨタの東富士研究所から菅野研のあるすずかけ台まで東名高速1時間、それなりの研究リソースを投入しているために、早ければ2020年に車載全固体電池を出すなんてことが言えるわけです。2020年まで残り3年、もう研究から開発に移行しているのかもしれません。

最後にもうひとつ、急速充電器と電気回路の話がおもしろかったのですが、電子版のページを見つけられませんでした。

日産のディーラーに設置されている急速充電器は、44 kWという大出力なのに細身のスタイリッシュな見た目をしています。他社の急速充電器や、リーフ発売当時の急速充電器がみな大きなお弁当箱のような形であるのと対照的です。この記事の画像が分かりやすいでしょう。

小型の急速充電器が実現された背景には、マトリックスコンバータという電気回路技術を長岡技術科学大学の技術協力で製品化し、部品点数とコストの削減に成功したことがあるようです。調べてみると日産のカタログにも述べられていました。

私は素材の方が専門に近いので気づきませんでしたが、電気工学の面で効率アップやコストダウンの余地が残されているのだろうと期待してしまいます。150 kW級の急速充電器では、どんな技術が投入されるのでしょうか。


ところで、急速充電器のカタログを見てみると、工事費が74万円から295万円(受電設備の状況による)、itmediaの記事による急速充電器本体が74万円以下ということなので、高圧受電設備があるなど条件さえ良ければ150万円程度で急速充電器を設置できるようです。

初代リーフ、結局どれだけ走るの?

日産 初代リーフ 電費(燃費)レポート|フルモデルチェンジ前にEVの性能をおさらい!慣れない単位に困惑!? オートックワン

フルモデルチェンジを9月にひかえたこの時期、モデルチェンジ前の初代リーフ(2010年~2017年)の電費がどれだけか、安心して走れる距離はどれだけかを検証した記事が出ていました。

いわゆる後期型Gグレード、30 kWhモデルでの結果が上のリンク先に示されています。高速道路や街乗りなど、道路状況別にまとめた表がわかりやすいのでご覧ください。

最悪の電費だったのが街乗りで7.4 km/kWhということですが、より電費が悪いとされる初代初期型で私のリーフが夏場で7.7 km/kWhだったことを考えると、夏場の電費は7~8 km/kWhくらいなのでしょう。初期型リーフは暖房でエネルギーを使う冬場に電費が6 km/kWh程度まで悪化するので、冬場のデータがあれば良いのですが。調べてみると、後期型30 kWhモデルでも冬場は6 km/kWh台まで電費が悪化するという報告がありました。

では、リーフは結局どれだけ走るのか?

バッテリー容量 (kWh) と電費 (km/kWh) がわかっているので、この二つの数値をかけ合わせれば航続距離が計算できます。

たとえば、冬場でも最悪6 km/kWhの電費で走れるとして、バッテリーが30 kWhなら180 km走れることになります。ただし、充電100%から0%に相当するので、電欠しないよう安全マージンを取ると航続距離は短くなります。また、私のように家庭に充電設備がなく、いつも急速充電器に立ち寄る必要がある場合は、100%充電で出発する仮定が現実的でありません。したがって、上記100%充電の走行距離の80%くらいの距離が1充電で間違いなく走れる距離と考えられます。180*0.8=144 km。片道で東京から新富士、京都から名古屋くらいの距離です。

電費は運転の仕方でも変わるようで、前述の記事では夏場に9~10 km/kWhだったと述べられています。夏場は悪くても7 km/kWh、良ければ10 km/kWh近くまで良くなる可能性があるわけです。いずれにせよ、厳寒期を想定した電費6 km/kWhよりはだいぶ余裕があると見込めます。

電費の他に考量する必要があるのが、バッテリーの劣化です。日産のバッテリー保証は24 kWhモデルが5年10万km、30 kWhモデルが8年16万kmの範囲で12分の8セグメントまでバッテリー容量が低下した場合、新品のバッテリーに交換してもらえます。単純に8/12までバッテリーの容量が低下すると、上で計算した最悪の航続距離は144*8/12=96 km、約100 kmです。近場を走り回るにはいいけれど、遠出をするには心もとない感じがします。

ただ、そこまでバッテリーが劣化するのも最悪の場合です。私のリーフはバッテリー劣化が激しいと言われる初代初期型ですが、6年3.5万kmで11/12セグメント残っています。中期型以降では24 kWhモデルにしろ30 kWhもモデルにしろ、バッテリー劣化がずいぶんと抑制されているらしいので、前述の試算は最悪のケースと考えてよいでしょう。

新型リーフは現行より航続距離3割アップが言われているので、新品で最悪190 km、劣化が進んでも130 kmくらいは走れるのかなと想像します。ここで少し注意が必要なのが、急速充電器の出力が大きなものでも50 kW以下、日産ディーラーにあるタイプでも44 kWであるということです。44 kWで30分 (0.5時間) 充電すると、22 kWhの電気が入りますが、この量は30 kWhの8割に満たない値です。1回の急速充電で走れる距離は、バッテリーの容量よりも急速充電器の性能に決められてしまうことになります。このあたりは150 kW級の急速充電器が近々登場するらしいので、早く普及してくれればと思います。また、バッテリー容量が十分に大きくなったことで、電欠までの安全マージンが取りやすく、どこの急速充電器で充電するかを選択しやすくなっていますので、運転者の心理的な負担は大きく低減されるはずです。

ところで、新型リーフの発表が近づき初代リーフの中古車価格が暴落しているので、購入を検討されている方もいると思います。私は初期型に乗っていて自分の使い方ではどうにかなっていますが、正直なところバッテリーの劣化や冬場の電費の悪さは否定できません。中古車を購入される際は、バッテリー劣化と暖房に対策がなされた中期型、2013年以降に新車登録されたものをお勧めします。

2017年7月

7月の走行距離は1387 kmでした。

電費が7.9 km/kWhで6月から0.2改善しました。長距離をエコ運転で走ったため、平均として良くなったのだと考えています。
神奈川から愛知まで国道1号線を走ったのですが、所要時間は8時間程度でした。東名高速を走ると7時間程度なので、あまり大きな差はありません。高速道路は充電できるSAの場所で充電タイミングが決められるのに対して、下道では充電施設の選択肢が多く電池が尽きる寸前まで走れるために充電回数が少なくなったことが理由です。
高速道路ならずっとオートクルーズで走れるので運転手としては高速道路の方が楽ですね。国道1号線もバイパス区間が多いとはいえ、信号のある区間がほとんどですので。

月額2,699円のEVSPに対して、ガソリン124円/Lとして燃費63.7 km/Lと同等です。

急速充電22回、普通充電1回

2017年6月

6月の走行距離は759 kmでした。

電費が7.7 km/kWhで5月から0.3悪化しました。暑くなってエアコンを使うようになったためでしょう。

月額2,812円のEVSP+都度利用に対して、ガソリン124円/Lとして燃費33.4 km/Lと同等です。

急速充電13回、普通充電1回

気温が高いおかげでバッテリー温度も高く、急速充電が早く終わって助かります。高速道路のSAなら15分充電すれば次のSAに行けるんじゃないかというくらいです。

リーフで登る八ヶ岳 (美濃戸-硫黄岳、横岳、赤岳)

昨年、南アルプスは鳳凰三山に登った仲間と八ヶ岳へ登ってきました。はたして今年も頂から素晴らしい眺望を楽しむことができるのか?

登山コースは美濃戸口で前泊、美濃戸の駐車場からスタートして、赤岳鉱泉経由で硫黄岳へ。硫黄岳山荘に宿泊して、横岳、赤岳を縦走して文三郎尾根から行者小屋経由で美濃戸の駐車場に戻りました。

前泊は美濃戸口にある美濃戸高原ロッヂ富士見町役場で充電しながら、近くのマツキヨとコンビニで買い出し。9目盛り、80%程度まで充電しました。

美濃戸口のバス停がある八ヶ岳山荘のところで左折して未舗装路に入ります。ところどころ轍や水たまりがあって怖い道ですが、リーフで問題なく走行できました。

8時ごろにやまのこ村の駐車場に到着。電池残量は4目盛りでした。バッテリーが初期容量の8割まで劣化した初期型リーフでこの程度なので、EVでここまで来るのは全く問題にならないでしょう。
駐車場代は1日1,000円なので、2日間で2,000円支払います。
駐車場の係の方に「最近の車はライトが縦長なんですね」と言われました。こんなところにリーフで来るもの好きはいないのでしょう。
登山靴に履き替えて、最後の準備を整えました。

朝日を浴びてきれいなお花がお出迎えしてくれました。

ここから先は登山道です。

苔の森の中を歩きます。

赤岳鉱泉

赤岳鉱泉 – Spherical Image – RICOH THETA

時折霧が晴れて、遠くまで見通せるときもありました。

すぐに霧の中へ逆戻り。昼食をとって、硫黄岳を目指します。

硫黄岳山頂からは何も見えません。雨が降っていないだけましと考えましょう。爆裂火口見てみたかったなあ。

霧の中を進んで硫黄岳山荘に到着です。13時ごろ、出発からここまで5時間。

硫黄岳山荘は山小屋とは思えない設備、サービスがあります。温水シャワー、暖かいトイレ、料理、Free WiFi。さすが八ヶ岳です。もちろん飲み水は蛇口から豊富に入手できます。

アマチュア写真家としては、この天上世界から満点の星空を眺めたいものです。ところが、上述のように登った日は天気が悪かった。深夜に外に出てみても、ライトの光が10 mも届かないような濃い霧に包まれていました。

待ちに待って午前3時半、ついに山荘付近の霧が晴れました。
すでに東の空は明るくなっており、星空撮影には厳しい状況でしたが、雲の合間を縫ってオリオン座を捕まえることができました。

硫黄岳山荘の星空 – Spherical Image – RICOH THETA

前日の天気からは絶望的と思えたご来光も見ることができました。

朝ごはんも豪華。準備を整えて6時半ごろに出発しました。

高山植物が朝露を抱いて一層美しく見えます。

天空のお花畑

クサリを頼りに断崖絶壁を進みます。

硫黄岳方面を振り返る。ずっとこれくらい晴れていてくれればよかったのですが。

死ぬ気で尾根歩きをして横岳に到着。本当にきつい。

横岳山頂 – Spherical Image – RICOH THETA

玄人おじいさんと赤岳。ここから眺める赤岳は大迫力のハズ。このあたりからまた視界がきかなくなってきました。

硫黄岳から赤岳の間の尾根筋にはお花畑がいくつもあったのですが、とてもじゃないがカメラを取り出す余裕がなかったのであまり撮影できず。

赤岳の手前、赤岳天望荘のところで天気がかなり怪しくなってきました。少し戻って地蔵尾根でエスケープするか、速やかに赤岳登頂して予定通り文三郎尾根に下りるか。
視界が少し回復したタイミングで赤岳登頂を開始しました。

クサリを頼りに急斜面を登っていきます。一瞬雲が途切れた瞬間に振り返ると、この世のものとは思えない絶景が。写真は撮れませんでしたが、この目に焼き付けました。

赤岳頂上も雲の中。写真家としては、まったく面白くありませんが、登山そのものの達成感に心は満たされていました。

赤岳頂上山荘 – Spherical Image – RICOH THETA

赤岳頂上

赤岳頂上 – Spherical Image – RICOH THETA

赤岳から文三郎尾根へ降りるところ

赤岳から文三郎尾根へ – Spherical Image – RICOH THETA

赤岳から降りる途中で、また奇跡的に雲が晴れる場面がありました。遠くが見えるようになると、自分がなんて極端な世界にいるのかを思い知ります。

中岳を見やる – Spherical Image – RICOH THETA

行者小屋に着いたのは12時ごろ。予定より遅れてしまいましたが、安全第一です。
疲れ切った我々をおいしいお昼御飯が待っていました。

アイスクリーム500円

行者ラーメン800円

カモシー丼800円

行者小屋から美濃戸のコースは、はじめと同じように苔の森の中を歩きます。ひたすら下るだけなので、同行者は飽きていました。よく見ると美しい光景があちらこちらに広がっているのですが。

美濃戸で車に戻って帰路につきました。

諏訪南ICから中央道へ入り、双葉SAで充電、ほったらかし温泉で汗を流して帰りました。